catch-img

情シスの属人化を解消する4つのステップと再発させない考え方

目次[非表示]

  1. 1.なぜ情シス業務は属人化するのか
  2. 2.まず現状把握:属人化度セルフチェック
  3. 3.属人化を放置する3つのリスク
  4. 4.属人化を解消する4つのステップ
  5. 5.属人化した状態と、運用化した後の違い
  6. 6.「点」の解消で終わらせないために
  7. 7.まとめ
  8. 8.よくある質問(FAQ)


「あの作業はAさんしか分からない」——情シスの現場でよく聞く一言です。

本記事は、担当者依存(属人化)に悩む中堅企業の情シス部門に向けて、属人化が起きる構造的な原因と、それを解消する4つのステップを具体的な進め方まで整理します。

結論を先に述べると、属人化は「可視化 → 標準化 → ナレッジ共有 → 自動化・外部連携」の順で解きほぐせます

ただし一度整えて終わりではなく、運用として回し続けることが再発を防ぐ鍵になります。

なぜ情シス業務は属人化するのか

属人化とは、特定の担当者にしか業務内容や手順が分からず、その人が不在になると業務が止まる状態を指します。情シスで属人化が起きやすいのには、個人の資質とは無関係の構造的な理由があります。

  • 業務が幅広く、非定型:サーバ運用からヘルプデスク、資産管理、セキュリティ対応まで守備範囲が広く、手順を書き起こす前に次の対応に追われる。
  • 改善業務が後回しになる:日々の「守りの運用」に時間を奪われ、ドキュメント整備という「攻めの改善」に手が回らない。情シス部門の業務時間の多くが、本来注力すべき企画・改善ではないノンコア業務(監視・障害一次対応・定型作業)に費やされているという調査結果もあります。
  • 暗黙知が短期的には効率的に見える:「聞けば早い」状態は目先では効率的なため、わざわざ共有する動機が働きにくい。

重要なのは、属人化は担当者個人の能力や姿勢の問題ではなく、業務構造が生み出す必然的な結果だと捉えることです。この前提を外すと「担当者にドキュメントを書かせる」という個人依存の対策に陥り、かえって属人化を強めてしまいます。

まず現状把握:属人化度セルフチェック

対策の前に、自社の属人化がどの程度進んでいるかを把握します。

次の5項目のうち3つ以上に当てはまる場合、属人化が進行していると考えてください。

  1. 特定の作業について、手順書が存在しない、または最終更新が1年以上前になっている。
  2. 障害発生時に「まず特定の担当者に連絡する」ことが暗黙のルールになっている。
  3. クラウドやサーバの設定変更について、変更履歴とその理由が記録されていない。
  4. キーパーソンの休暇中は、特定の作業を止めるか後回しにしている。
  5. 新しく配属された人が、独力でキャッチアップできる資料が整っていない。

特に3番目は、後述するセキュリティリスクに直結するため見落とせません。

属人化を放置する3つのリスク

属人化のリスクは「担当者が休むと困る」だけにとどまりません。

  1. 事業継続リスク:キーパーソンの退職・異動・休職で運用が停止する。引き継ぎ期間が確保できないまま担当者が抜けると、復旧に数か月を要することもあります。
  2. セキュリティリスク:設定変更の履歴や意図が共有されず、設定不備や過剰な権限、放置されたアカウントが温存される。誰も全体像を把握していないクラウド環境ほど、リスクが長期間気づかれません。
  3. 改善が進まない:業務が見えないため、コスト削減や自動化の判断材料がそろわず、投資対効果を経営層に説明できない。

属人化を解消する4つのステップ


図:属人化解消の4ステップ。「点」の対策で終わらせず、運用として回し続けることが要になる。

ステップ1:業務の可視化(棚卸し)

まず「誰が・何を・どの頻度で・どの手順で」対応しているかを洗い出します。完璧なドキュメントは不要です。最初は表計算ソフト1枚で、次の列を並べるだけで十分です。

業務名

担当者

発生頻度

手順書の有無

最終更新日

対応できる人数

この表で「対応できる人数が1人の業務」が、属人化の最優先対象として浮かび上がります。まずはここに絞り込むことで、限られた工数を効果的に配分できます。

ステップ2:標準化(手順の再現可能化)

洗い出した業務のうち、頻度が高く手順が固定的なものから、手順書とチェックリストに落とします。ポイントは、正常時の手順だけでなく、例外時の判断分岐まで書くことです。

例えば「夜間バックアップが失敗した場合」であれば、「誰に連絡し」「どのログのどの項目を確認し」「どう切り分けるか」まで記述します。正常系だけの手順書では、いざという時に結局その担当者へ電話することになり、標準化した意味がありません。

ステップ3:ナレッジ共有(組織知への転換)

作成した手順書やトラブル対応の記録を、検索可能な場所に一元管理します。個人のメモ、チャットの履歴、担当者の頭の中に散在している暗黙知を、誰でもたどれる組織知に変えることが目的です。あわせて「いつ・誰が見直すか」という更新ルールまで決めておきます。更新されない手順書は急速に陳腐化し、結局「聞いたほうが早い」状態へ逆戻りするためです。

ステップ4:自動化・外部連携(人が張り付かない体制)

定型業務(アカウント発行、証明書更新、ログ確認など)は自動化・スクリプト化し、専門性が高い領域や夜間・休日の監視対応は外部と分担します。ステップ1〜3で標準化・ナレッジ化が進んでいれば、自動化する対象も外部に任せる範囲も明確に切り出せます。

逆に、可視化を飛ばして外注だけを先に進めると、委託先がブラックボックス化し、属人化が「社外へ移動」するだけになります。何を任せているのかを社内で説明できない状態は、担当者依存と同じリスク構造です。

属人化した状態と、運用化した後の違い

4ステップを経ると、現場の状態は次のように変わります。

観点

属人化したまま

標準化・運用化した後

状態把握

担当者に聞かないと分からない

資料を見れば誰でも把握できる

障害対応

特定の人に依存・復旧が遅れる

手順に沿って複数人が対応可能

引き継ぎ

数か月かかる/漏れる

資料ベースで短期間に完了

セキュリティ

設定の意図が不明・不備が残る

変更履歴と理由が追跡できる

改善

判断材料がなく進まない

数字を根拠に投資判断できる

「点」の解消で終わらせないために

ここまでの4ステップは、健康診断で見つかった不調を1つずつ整える作業に近いものです。しかし属人化は、人の入れ替わりやシステム更新のたびに再発します。手順書は放置すれば古くなり、新しく増えた業務はまた誰か1人に集中していきます。

BFTが20年以上にわたり金融・公共の大規模システム運用に携わってきた経験からも言えるのは、属人化の解消は一度きりのプロジェクトではなく、運用として回し続けるテーマだということです。現状を診断で「点」として把握することと、その状態を「線」で維持し続けることは、別の営みとして設計する必要があります。図の下部に示した「運用サイクル」を回し続ける仕組みこそが、再発防止の本質です。

[関連記事リンク: 大規模運用の現場は、なぜ"詰まり"やすいのか]

まとめ

  • 情シスの属人化は個人の能力ではなく、業務構造が生む結果として捉える。
  • 対策の前に、5項目のセルフチェックで自社の属人化度を把握する。
  • 放置は事業継続・セキュリティ・改善停滞の3つのリスクにつながる。
  • 解消は「可視化 → 標準化 → ナレッジ共有 → 自動化・外部連携」の4ステップで進める。
  • 可視化を飛ばした外注は、属人化を社外に移すだけになりやすい。
  • 属人化は再発するため、「点」の見直しでなく運用として回し続けることが本質。

よくある質問(FAQ)

Q. 情シスの属人化はどこから手をつければよいですか?
A. まず業務の棚卸し(可視化)から始めます。担当者が1人しかいない業務を特定し、頻度が高いものから手順書化するのが効率的です。ツール導入や外注はその後で判断します。

Q. ドキュメントを作っても使われず、また属人化してしまいます。
A. 作成だけでなく「いつ・誰が更新するか」という運用ルールをセットで決めることが重要です。更新されない手順書は陳腐化し、結局担当者に聞く状態へ戻ります。

Q. 外注すれば属人化は解消しますか?
A. 可視化・標準化を経ずに外注すると、委託先がブラックボックス化し、属人化が社外へ移るだけになります。まず社内で業務を見える化してから、任せる範囲を切り出すのが安全です。

Q. 属人化の解消にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 業務範囲によりますが、可視化(棚卸し)だけなら数週間で着手できます。重要なのは全業務を一度に整えようとせず、担当者が1人の業務から段階的に進めることです。


自社の運用がどこまで属人化しているか、まず現状を整理したい方へ

上記のセルフチェックで気になる項目があった方は、まず現状を客観的に把握することをおすすめします。

YOROZUでは、入力不要で試せる無料セルフチェックと、情シス運用の課題を構造的に整理する入口をご用意しています。

属人化は「見つける」だけでなく「直し続ける」ことで初めて解消します。

運用として支える伴走型サービスについては、YOROZU STEADYのご相談 もご利用ください。

大原
大原
株式会社BFTのマーケティングを推進しています。

人気記事ランキング

タグ一覧