システム運用のノンコア業務とは|情シスを圧迫する原因と減らす順序
「本当はシステムの企画や改善に時間を使いたいのに、日々の運用対応で一日が終わる」——中堅企業の情シス部門で繰り返し聞かれる悩みです。本記事は、システム運用のノンコア業務に忙殺される情シス担当者・IT管理職に向けて、ノンコア業務が部門を圧迫する構造的な原因と、それを減らす手順を整理します。結論を先に述べると、ノンコア業務は「棚卸しで見える化 → コア/ノンコアに分類 → 自動化・標準化・外部化の3つに振り分け」という順序で減らせます。ただし一度減らして終わりではなく、増え続ける前提で運用として管理し続けることが要になります。
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システム運用のノンコア業務とは(コア業務との違い)
ノンコア業務とは、企業の競争力や事業価値に直接結びつかない、定型的・付随的な業務を指します。情シスの文脈では、コア業務とノンコア業務は次のように整理できます。
区分 | 位置づけ | 情シスでの具体例 |
|---|---|---|
コア業務 | 事業価値・競争力に直結する企画的業務 | IT戦略立案、業務改善の企画、新システム選定、DX推進、投資判断 |
ノンコア業務 | 定型的・付随的で、止められないが価値を生みにくい業務 | 稼働監視、障害の一次対応、アカウント発行、問い合わせ・ヘルプデスク、資産管理、定型レポート作成 |
注意したいのは、ノンコア業務は「不要な業務」ではないという点です。監視や障害対応は事業を止めないために不可欠です。問題は、これらが情シスの時間を占有し、コア業務に割く余力を奪ってしまう構造にあります。減らすべきは業務の存在そのものではなく、そこに人が張り付く時間です。
なぜノンコア業務が情シスを圧迫するのか
情シスの業務時間は、本来注力すべき企画・改善ではないノンコア業務(監視・障害一次対応・定型作業)に多くが費やされているという調査結果もあります。これは担当者の怠慢ではなく、業務構造が生む必然的な結果です。
図:情シスの業務構造(イメージ)。土台のノンコア業務が工数を消費し、頂点の企画・改善まで手が届かない。
圧迫が起きる理由は主に3つあります。
- 突発性が高い:ヘルプデスクや障害対応は発生を予測しにくく、計画していた改善作業を中断させる。細切れの割り込みが積み重なり、まとまった思考時間が取れない。
- 範囲が広く終わりがない:ネットワーク・サーバ・クラウド・エンドポイントまで守備範囲が広く、対応してもすぐ次の依頼が来る。
- 成果が見えにくい:「止めなかった」ことは評価されにくく、改善のための工数を確保する交渉材料になりにくい。
この構造を放置すると、コア業務が慢性的に後回しになり、改善が進まないためノンコア業務がさらに増える、という悪循環に陥ります。
ノンコア業務の負担度セルフチェック
自社の状況を把握するために、次の5項目で確認してください。3つ以上当てはまる場合、ノンコア業務が部門を圧迫していると考えられます。
- 割り込み対応(問い合わせ・障害)で、当初予定していた作業が週の半分以上中断される。
- 企画・改善のためのまとまった時間を、月単位でほとんど確保できていない。
- 監視や夜間・休日対応のために、特定の担当者が常に気を張っている状態が続いている。
- 「誰がどの作業にどれだけ時間を使っているか」を数字で説明できない。
- 増員や外注を検討したいが、任せる業務を切り出して説明できる資料がない。
4番目・5番目に当てはまる場合、次のステップである「棚卸し」から着手するのが効果的です。
ノンコア業務を減らす前にやること:棚卸しと分類
ノンコア業務削減で最も多い失敗は、棚卸しを飛ばして、いきなりツール導入や外注に走ることです。何にどれだけ時間を使っているかが分からないまま手を打つと、効果が出ない領域に投資したり、外注先がブラックボックス化したりします。
まずは表計算ソフト1枚で、次の列を埋めるだけで十分です。
業務名 | 発生頻度 | 1回あたり時間 | 判断の要否 | コア/ノンコア | 対応できる人数 |
|---|
ポイントは、「発生頻度 × 1回あたり時間」で総工数を概算し、負担の大きい業務から並べることです。「判断の要否」の列は、後述する打ち手の振り分けに使います。判断が不要で頻度が高い業務ほど自動化の効果が大きく、判断が必要な業務は標準化や外部化の対象になります。
ノンコア業務を減らす3つの打ち手
棚卸しで分類したノンコア業務は、大きく3つの打ち手に振り分けます。
図:棚卸しで分類したノンコア業務を、自動化・標準化・外部化の3つに振り分ける。
1. 自動化(頻度が高く手順が固定的な業務)
アカウント発行、証明書更新、ログ確認、定型レポート作成のように、判断が不要で繰り返し発生する業務はスクリプト化・ツール化します。例えば、毎朝手作業で確認していたバックアップの成否確認を、失敗時だけ通知が飛ぶ仕組みに変えるだけで、確認作業そのものがなくなります。
2. 標準化(判断は要るが手順化できる業務)
障害の一次切り分けや問い合わせ対応のように、多少の判断を伴う業務は、手順書とチェックリストに落とします。このとき、正常時の手順だけでなく例外時の判断分岐まで書くことが重要です。例えば「夜間バックアップが失敗した場合」なら、誰に連絡し、どのログのどの項目を確認し、どう切り分けるかまで記述します。正常系だけの手順書は、いざという時に結局担当者へ連絡することになり、標準化した意味がなくなります。
3. 外部化(専門性・時間帯の制約が大きい業務)
夜間・休日の監視、高度なセキュリティ対応など、社内で抱えると負担が偏る業務は外部と分担します。ただし、棚卸しと分類を経ずに外部化だけを先行させると、委託先がブラックボックス化し、負担が「社外へ移動」するだけになります。何を任せているかを社内で説明できない状態は、担当者依存と同じリスク構造です。外部化は3つの打ち手の中で最後に検討するのが安全です。
ノンコア業務を抱えたままと、整理した後の違い
3つの打ち手を進めると、現場の状態は次のように変わります。
観点 | ノンコア業務を抱えたまま | 棚卸し・整理した後 |
|---|---|---|
時間配分 | 割り込み対応で改善に手が回らない | 企画・改善にまとまった時間を確保できる |
属人化 | 特定の人が監視・対応に張り付く | 手順化・自動化で複数人が対応可能 |
説明性 | 業務量を数字で示せない | 工数を根拠に増員・投資を説明できる |
対応品質 | 割り込みで対応が場当たり的 | 手順に沿って安定した品質を保てる |
改善余地 | 判断材料がなく止まる | 数字を根拠に次の一手を打てる |
「減らして終わり」にしないために
ここまでの打ち手は、健康診断で見つかった不調を1つずつ整える作業に近いものです。しかしノンコア業務は、システムの追加や組織変更のたびに再び増えていきます。自動化した仕組みは保守が必要になり、標準化した手順は放置すれば陳腐化します。
BFTが20年以上にわたり金融・公共の大規模システム運用に携わってきた経験からも言えるのは、ノンコア業務の削減は一度きりのプロジェクトではなく、運用として回し続けるテーマだということです。現状を診断で「点」として把握することと、その状態を「線」で維持し続けることは、別の営みとして設計する必要があります。ITIL v4やSRE、AIOpsといった運用の型は、この「線」を仕組みで支えるための土台になります。
[関連記事: 情シスの属人化を解消する4つのステップ]
[関連記事: 大規模運用の現場は、なぜ"詰まり"やすいのか]
まとめ
- ノンコア業務とは、止められないが価値を生みにくい定型・付随業務(監視・障害一次対応・問い合わせ等)を指す。
- 減らすべきは業務の存在ではなく、そこに人が張り付く時間である。
- ノンコア業務が情シスを圧迫するのは、突発性・範囲の広さ・成果の見えにくさという構造による。
- 5項目のセルフチェックで自社の負担度を把握する。
- 削減は「棚卸し → コア/ノンコア分類 → 自動化・標準化・外部化」の順で進める。
- 棚卸しを飛ばした外部化は、負担を社外に移すだけになりやすい。
- ノンコア業務は再び増えるため、「減らして終わり」でなく運用として管理し続けることが本質。
よくある質問(FAQ)
Q. システム運用のノンコア業務とは具体的に何ですか?
A. 稼働監視、障害の一次対応、アカウント発行、問い合わせ・ヘルプデスク、資産管理、定型レポート作成などです。事業を止めないために必要ですが、企画・改善のようなコア業務と違い、直接的な価値を生みにくい定型・付随業務を指します。
Q. ノンコア業務はどこから減らせばよいですか?
A. まず業務の棚卸しから始めます。「発生頻度 × 1回あたり時間」で負担の大きい業務を特定し、判断が不要で頻度が高いものから自動化するのが効率的です。ツール導入や外注はその後で判断します。
Q. ノンコア業務は外注すれば解決しますか?
A. 棚卸しと分類を経ずに外注すると、委託先がブラックボックス化し、負担が社外へ移るだけになります。まず社内で業務を見える化し、任せる範囲を切り出してから外部化するのが安全です。
Q. ノンコア業務を減らすと、情シスは何に時間を使えますか?
A. IT戦略の立案、業務改善の企画、新システムの選定、DX推進など、事業価値に直結するコア業務に時間を振り向けられます。ノンコア業務の削減は、コア業務の時間を生み出すための手段です。
自社のノンコア業務がどれだけ部門を圧迫しているか、まず現状を整理したい方へ
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