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クラウドコストを経営層に説明する資料の作り方|通る5つの構成

「クラウド代が高い。もっと削れないのか」——経営層からのこの一言に、うまく答えられず困った経験はないでしょうか。本記事は、クラウドコストを経営層に説明する資料の作り方を、情シス・経営企画の担当者に向けて整理します。結論を先に述べると、経営層に通る資料は「現状の総額 → 増加の理由 → 削減余地(金額) → 施策と期間 → 維持の仕組み」の5構成で組み立てます。感覚的な「頑張って削ります」ではなく、数字と構造の順序で語ることが承認を引き出す鍵です。

目次[非表示]

  1. 1.なぜ「コストを下げたい」だけでは経営層は動かないのか
  2. 2.経営層が本当に知りたい3つの問い
  3. 3.経営層に通る資料の5つの構成
  4. 4.技術の言葉を経営の言葉に翻訳する
  5. 5.セルフチェック:その資料は経営層に通るか
  6. 6.「一度作って終わり」にしないために
  7. 7.まとめ
  8. 8.よくある質問(FAQ)

なぜ「コストを下げたい」だけでは経営層は動かないのか

現場の担当者と経営層とでは、同じクラウド費用を見ていても関心の焦点が違います。担当者は「どのインスタンスが過剰か」という技術の解像度で考えますが、経営層が判断したいのは「いくらの投資で、いくら返ってくるのか」という一点です。

この視点のずれを埋めないまま、使用率のグラフやサービス名の羅列を並べても、経営層には「専門的で、よく分からない」としか伝わりません。逆に「なんとなく高い気がするので削減します」という感覚的な説明では、判断の根拠がなく、承認も予算もつきません。

必要なのは、技術の言葉を経営の言葉に翻訳することです。翻訳の中身は、突き詰めれば「金額」「期間」「根拠」の3つに集約されます。

経営層が本当に知りたい3つの問い

資料に何を盛り込むか迷ったら、経営層が抱く次の3つの問いに答えられているかで判断します。

  1. 今、いくら使っているのか:総額と、その内訳(何に・どの部署が)。
  2. なぜ増えているのか:増加が一時的なものか、構造的なものかの切り分け。
  3. いくら・いつまでに減らせるのか:削減の期待額と、効果が出る時期。

この3つに具体的な数字で答えられれば、資料の骨格はほぼ完成です。多くの資料が通らないのは、1つ目の「現状」で止まり、2つ目・3つ目の「原因」と「打ち手」まで踏み込めていないことに原因があります。

経営層に通る資料の5つの構成

3つの問いを、実際の資料の並びに落とし込むと次の5構成になります。上から順に説明することで、経営層は「現状 → 課題 → 打ち手 → その後」を無理なく理解できます。

構成

目的

入れるべき数字

1. 現状の総額

規模感の共有

月額・年額、費目別/部署別の内訳

2. 増加の理由

課題の構造化

増加分を要因別に分解した金額

3. 削減余地(金額)

期待値の提示

「年間◯◯万円」の削減見込み

4. 施策と期間

実行計画の提示

施策ごとの効果額と着手〜効果の時期

5. 維持の仕組み

再発防止の担保

月次でどう見張るかの運用ルール

とくに差がつくのが2番目「増加の理由」の分解です。「先月より50万円増えた」だけでは判断できませんが、「うち30万円は新規プロジェクトの正当な増加、20万円は消し忘れた検証環境の無駄」と分けて示せば、経営層は迷わず「20万円分を止めよ」と判断できます。増加を「正当な投資」と「削るべき無駄」に切り分けることが、資料の説得力を大きく左右します。

技術の言葉を経営の言葉に翻訳する

現場でよく使う表現を、そのまま資料に書いても経営層には届きません。同じ内容を経営の言葉に置き換えるだけで、伝わり方が変わります。

技術の言葉(Before)

経営の言葉(After)

インスタンスが過剰プロビジョニング

使っていない容量に年間◯◯万円を支払っている

リザーブドインスタンスの購入を推奨

1年契約への切り替えで月額を約3割圧縮できる

タグ付けができていない

どの事業が費用を生んでいるか按分できていない

使用率が低い

買った性能の8割を使わずに眠らせている

ポイントは、技術用語を消して「金額」と「経営上の意味」に言い換えることです。たとえば「使用率が一割台」という事実は、経営層には「支払った性能の9割が無駄」と表現したほうが、危機感も打ち手の必要性も正確に伝わります。

なお、削減余地の目安として活用できる数字もあります。アイドル状態の資源や過剰にプロビジョニングされたインスタンスなどの無駄が、クラウド支出全体の25〜35%を占めるとする調査結果があります。自社の年間費用にこの比率を当てはめれば、「年間費用1,200万円なら、300〜400万円前後の削減余地がある可能性」という具体的な試算を、資料の出発点として示せます。ただし実際の余地は使い方次第で大きく変わるため、断定は避け「現状把握を前提とした見込み」として提示するのが誠実です。

セルフチェック:その資料は経営層に通るか

作成した資料が承認を引き出せる水準にあるか、次の5項目で確認してください。3つ以上「いいえ」があれば、経営層の判断材料としては不足しています。

  1. 費用の総額を、費目別・部署別の内訳まで示せているか。
  2. 増加分を「正当な増加」と「無駄」に切り分けて説明できているか。
  3. 削減の効果を、率(%)ではなく金額で示せているか。
  4. 施策ごとに「いつ着手し、いつ効果が出るか」の時期を添えているか。
  5. 一度削減した後、費用をどう見張り続けるかを説明できているか。

5番目でつまずく資料は少なくありません。削減の実行計画までは描けても、「その後どう維持するか」まで踏み込めていないと、経営層は「また来年、同じ話をするのでは」と警戒します。

「一度作って終わり」にしないために

経営報告は、年度末や予算編成の時期にまとめて作るものと捉えられがちです。しかしクラウド費用は毎月変動し、新しい資源も日々増えます。一度きりの棚卸しで下げても、半年後にはまた無駄が積み上がります。

そこで、報告を「見える化 → 経営報告 → 投資判断 → 改善実行」の月次サイクルとして回すことをおすすめします。毎月の定点観測にすれば、増加の兆候を早期に捉えられ、経営層も「クラウド費用は管理されている」という安心感を持てます。ここで前提になるのがFinOps(エンジニア・財務・経営が協力して費用を継続的に最適化する考え方)の発想です。

現状を診断で「点」として把握することと、その状態を月次で「線」として維持し続けることは、別の営みです。BFTが金融・公共分野で20年以上、大規模システムの運用を担ってきた経験からも言えるのは、費用の適正化は直し続けることではじめて成果になるということです。診断で見えた削減余地を、経営を巻き込んだ運用として定着させて、はじめて資料は「一度きりの報告」から「意思決定の仕組み」へと変わります。

[関連記事: クラウド費用が増え続ける原因と削減方法]
[関連記事: FinOpsとは|中堅企業のクラウドコスト最適化の始め方]

まとめ

  • 経営層は「金額・期間・根拠」で判断する。技術の解像度のままでは資料は通らない。
  • 通る資料は「現状の総額 → 増加の理由 → 削減余地(金額) → 施策と期間 → 維持の仕組み」の5構成で組む。
  • 増加分は「正当な投資」と「削るべき無駄」に切り分けて示すと説得力が増す。
  • 削減効果は率ではなく金額で語り、無駄が支出の25〜35%を占めるという調査を試算の出発点にできる。
  • 一度の報告で終わらせず、月次サイクルで維持することで「意思決定の仕組み」になる。

よくある質問(FAQ)

Q. 経営層への説明資料は、何ページくらいにまとめるべきですか?
A. ページ数より構成です。本記事の5構成が1枚ずつでも、要点が「現状・原因・削減額・計画・維持」の順で並んでいれば十分に機能します。冒頭に結論(削減見込み額)を1行で置くと、多忙な経営層にも伝わります。

Q. 削減額の試算に自信がありません。どう示せばよいですか?
A. 断定を避け「現状把握を前提とした見込み」として示します。無駄が支出の25〜35%を占めるという調査を自社費用に当てはめた概算を出発点にし、正確な額は診断や見える化で確定させる、という順序で説明すれば誠実です。

Q. 費用の内訳を部署別に分けられていません。どうすればよいですか?
A. まずクラウド側のタグやアカウント区分で費用を按分できる状態を作ります。これができていないと「どの事業が費用を生んでいるか」を経営層に示せません。按分の仕組みづくりが、経営報告の実質的な第一歩になります。

Q. 資料は作れても、削減が続かず毎年同じ説明をしています。
A. 報告を単発ではなく月次サイクルにすることが必要です。見える化・報告・投資判断・改善を毎月回す運用に変えると、増加の兆候を早期に捉えられ、削減した状態を維持できます。


クラウド費用を経営層に説明する前に、まず「どの費目・どの資源に、いくらの無駄が眠っているか」を数字で押さえておくと、資料の説得力が一段上がります。YOROZU SNAP コスト診断では、削減余地を具体的な金額で見える化し、そのまま経営報告に使える形で提示します。

クラウドコストの説明資料は「作って終わり」ではなく、月次で回し続けることではじめて経営の意思決定を支えます。診断で見えた「点」を「線」の運用へつなぐ考え方は、YOROZU STEADY でも詳しくご紹介しています。

大原
大原
株式会社BFTのマーケティングを推進しています。

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